今回は当社の環境への取り組みの一つとして、「刷版の無処理化」についてご紹介します。
刷版とは?
「刷版(さっぱん)」とは、印刷機に取り付けるアルミの版のこと、またはその版を製造する工程をいいます。一言で表わすと「印刷するための大きなハンコ」を作るようなイメージです。当社の刷版工程では、2015年から刷版の現像処理で排出される廃液に対し、濃縮・濾過装置を導入し、環境負荷の軽減に努めてきました。しかし、印刷会社の課題とも言える「廃液ゼロ」を目指し、2022年に刷版を無処理プレートに完全移行しました。これにより刷版工程から排出される廃液がなくなり、更なる環境負荷の軽減とコストの削減を実現しました。
有処理プレートと無処理プレートの違い
刷版には有処理プレートと無処理プレートの二種類があり、どちらもCTP(プレートセッター)と呼ばれる機械を使用し、レーザー光で刷版に印刷画像を焼き付けていきます。その大きな違いは焼き付け後の現像方法にあり、有処理プレートは現像液やガム液などの薬品を使用する自動現像機で現像処理が行われます。一方、無処理プレートでは自動現像機を使用せず、印刷機上で現像を行うことができます。そのため、現像液やガム液が不要です。現像液とそれを洗い流す水が混ざり合った廃液はアルカリ濃度が高く、健康や生活環境にかかわる被害を生ずるおそれがあるとされる「特別管理産業廃棄物」に指定されています。また、酸性のガム液も産業廃棄物として排出されます。こうした廃液をゼロにすることで、環境負荷の大幅な軽減につながっているのです。
無処理プレートを採用した際の印刷の品質
無処理プレートは環境負荷が少なく、現像液などの資材コスト削減にもつながり、良いことばかりのようですが、デメリットもあるのでしょうか。難点を挙げるとすれば、2つあります。一つは、プレートが高額で刷版代が割高であること。もう一つは、印刷技術の難易度が上がることです。前者については、現像機の管理コストや現像液などの資材コストが削減されることでトータルでのコストは、有処理プレートに比べて抑えられます。後者については、印刷機上での水とインキのバランスが難しく、導入にあたっては調整が必要でした。メーカーの担当者に現場に立ち会ってもらい、相談をしながら品質のチェックを重ねました。本格的な導入までにはこれらの技術的な課題を克服し、現在では問題なく運用しています。印刷の品質も、有処理プレートと無処理プレートでの差はありません。
まとめ
これまで見てきたように、環境負荷が少なくコストの削減にもつながる無処理プレートの導入には大きなメリットがあります。長年続けてきた方法を変えることは簡単ではありませんが、生産性の向上や環境のことも考えながら、これからも当社では時代の変化に合った取り組みを続けていきます。