前回の「色の基礎知識」に続き、今回は色の中でも特に使われることの多い「黒色(ブラック)」の表現方法についてお伝えしていきます。
3つの「黒色」の表現方法
液晶モニターなど画面上では同じように見える「黒色」も、印刷においては3つの表現方法があります。
[スミベタ]=K100%
● 黒色(K)のインキ1色を100%で表現する黒色
● 見当ズレ(版ズレ)の影響を受けず、文字や繊細な線の再現に適している
● K100%のオブジェクトは「オーバープリント」として処理され、黒色の下に配置された色や絵が透けることがある
● 広い範囲を塗りつぶすと、ピンホール状の色抜け(白抜け)ができやすい
● 見当ズレ(版ズレ)の影響を受けず、文字や繊細な線の再現に適している
● K100%のオブジェクトは「オーバープリント」として処理され、黒色の下に配置された色や絵が透けることがある
● 広い範囲を塗りつぶすと、ピンホール状の色抜け(白抜け)ができやすい
スミベタを使ったことで「オーバープリント」の処理がされると、黒面の下に重なって印刷された色などの背景が透けて表現されることがあります。
これを避けるためには、黒色(K)を99%にして、1%でもシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のいずれかの色を入れる、もしくはリッチブラックを選択するなど、対応を検討しましょう。
[リッチブラック]=C40% M40% Y40% K100%(推奨)
● CMYKをバランス良く掛け合わせて表現する黒色
● 深みのある濃い黒色が再現できる
● インキの掛け合わせによって作るため見当ズレ(版ズレ)しやすく、文字や繊細な線の再現には適さない
● CMYKの合計数値(総インキ量)が250%を超えるとインキが乾きにくくなり、用紙同士がくっつきやすい(ブロッキング)
リッチブラックは、引き締まった深い黒色など、色へのこだわりがある場合におすすめです。一方で、見当ズレ(版ズレ)が起こりやすいのが難点で、特に細かい文字などには適しません。スミベタと使い分けるなど、使い方に注意が必要です。
● 深みのある濃い黒色が再現できる
● インキの掛け合わせによって作るため見当ズレ(版ズレ)しやすく、文字や繊細な線の再現には適さない
● CMYKの合計数値(総インキ量)が250%を超えるとインキが乾きにくくなり、用紙同士がくっつきやすい(ブロッキング)
リッチブラックは、引き締まった深い黒色など、色へのこだわりがある場合におすすめです。一方で、見当ズレ(版ズレ)が起こりやすいのが難点で、特に細かい文字などには適しません。スミベタと使い分けるなど、使い方に注意が必要です。
[4色ベタ]C100% M100% Y100% K100%
● CMYKいずれも100%で掛け合わせて表現する黒色
● リッチブラックよりさらに深みのある濃い黒色が再現できる
● 大量のインキを使用するためインキの乾きが悪く、用紙同士がくっつきやすい(ブロッキング)
● 黒色が濃いため用紙の裏面に映って見えやすい(裏写り)
● CMYKの合計数値(総インキ量)が340%を超えるとインキが非常に乾きにくくなる(印刷に適さない)
深く濃い黒色を再現できる4色ベタですが、総インク量が高い分、ブロッキングや裏うつりなどのトラブルが起こりやすくなります。また、インキが乾かず、他の色に影響が出ることもあるでしょう。
● リッチブラックよりさらに深みのある濃い黒色が再現できる
● 大量のインキを使用するためインキの乾きが悪く、用紙同士がくっつきやすい(ブロッキング)
● 黒色が濃いため用紙の裏面に映って見えやすい(裏写り)
● CMYKの合計数値(総インキ量)が340%を超えるとインキが非常に乾きにくくなる(印刷に適さない)
深く濃い黒色を再現できる4色ベタですが、総インク量が高い分、ブロッキングや裏うつりなどのトラブルが起こりやすくなります。また、インキが乾かず、他の色に影響が出ることもあるでしょう。
総インキ量は印刷の用紙・インキ・印刷機などによって限界値が異なります。総インキ量の限界値は新聞では250%、雑誌広告では320%、一般商業印刷では300~360%と言われています。そこで、4色ベタのデータは印刷所で自動的に総インキ量の調整を行うことがあります。
弊社では総インキ量の上限値を300%に設定し、自動調整を行っています。
まとめ
今回は、色の中でも特に使われることの多い「黒色(ブラック)」について、「スミベタ」「リッチブラック」「4色ベタ」の3つの表現方法をご紹介しました。
モノクロの印刷物はもちろん、カラーの印刷物でも、黒色の表現は仕上がりの印象に大きく影響を与えます。3つそれぞれの特徴やメリット・デメリットを押さえながら、表現したい黒色を探っていきましょう。
弊社では仕上がりのイメージに最も適した表現方法をご提案させていただきます。ぜひ、お気軽にご相談ください。